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錨の技術で家具を作る。
この伝統技術を、海から住まいへ。
「錨(いかり)」と聞いて、すぐに思い浮かべることができますか?船を停めておくため、鎖やロープを付けて海底などに沈める道具です。漁師にとって欠かせないツールの一つでしたが、漁師の高齢化などでいま需要は減っています。
錨のなかでも鍛造(たんぞう)という方法による「鍛造錨」は職人の貴重な技術によってつくられます。しかし、鍛造錨をつくれる鉄工所は、日本にあと数軒しかありません。その一つが、鍛冶の歴史がある町・広島県福山市鞆町にありました。生き残ってはいたものの、その鉄工所は時代や環境の変化により経営継続が難しくなっていました。
そこで、同じ町にある会社で鍛冶屋から創業した『株式会社三暁』の代表は考えました。
「これは日本からなくしてはいけない! 100年以上脈々と続いてきた技術と、錨のかっこよさを引き継ごう」。
2016年、働いていた職人を含めて鉄工所を買い取り、『株式会社三暁』の新部門として引き継いだのです。伝統を守るため、鍛造錨の技術を使った新しいものづくりを―。模索の末、職人たちがつくり始めたものは、家具でした。
こうして2018年5月に誕生した家具ブランドが「TAonTA(タオンタ)」です。「TAonTA」とは、鍛冶の本場である北欧のフィンランド語で「鍛造」という意味を持ちます。
100年前と変わらない技術を使った、ものづくり。
海だけでなく、家具やインテリアの世界でも、その可能性を発揮していきます。
ハイテクとローテクの融合。
「TAonTA」の大きな特徴は、商品の一部分が自由鍛造によるものだということ。テーブルやスツールの脚がそうです。
型を使わず、鉄を直火で焼いてハンマーで叩いて成形するため、独特の凹凸ができ、それが味わいになっています。職人が感覚でものをつくっていく、昔ながらの手法です。引き継いだ鍛造技術の一つが「金焼(かねやき)」です。職人は、焼け具合を色で判断し、巧みに手を動かしていきます。
「10年ほど学ぶと一人前になる」と言われています。
製作の中心になっている職人は50代。それを、20代の若き職人がサポートし、最新の道具やYouTubeなども活用しながら修業しています。
実は『株式会社三暁』は、3D設計技術や最新の機械を使って橋や土木建築、ワイヤロープなどに関わる金属製品の製造・販売を行う“鉄でものづくりをするハイテク会社”です。
一方で、鍛造錨の伝統技術は超ローテク。「TAonTA」の職人たちはそれらを行き来し、週に一度鍛造を行い、ほかの日は最新の機械やロボットを使用した金属加工や精密検査の業務をしているのです。「TAonTA」の商品に加えて、それらを融合したオーダーメイドのものづくりも受け付けています。